DESIGNER

岡田訓明の日々の徒然ブログ
『ジュエリーデザイナーの嗜み』

シンプルについて思うこと

シンプルについて思うこと

ジュエリーのお話スタイル雑記

デザインのご相談では多くの方が「シンプルなデザイン」と仰います。
シンプルとは「簡素」「単純」「飾りや無駄がない」とあります。
具体的なイメージを持っていなければ「シンプルなデザイン」が間違いのないものになりそうな気がするというところもあると思います。子供の頃、レストランに連れて行ってもらった時に肉の焼き加減を聞かれて「ミディアム」って答えていたあれに近いものがあるのかもしれません。

そういう私は昔からシンプルなデザインが好きで、ダイヤモンドなら「石だけが見えて台座や爪などが一切見えないデザイン」という極端なことになるのですが、そんなものは作れないため出来るだけその状態に近いデザインが究極に綺麗だと思っています。それならデザインなんて要らないじゃないか?と思われるかもしれませんが、究極にシンプルにデザインするということは構造や耐久性などが分かっていないとデザイン出来ません。

シンプルなデザインをする場合の心掛けは、アイデアを出してみて余計な線が無いこと。もう少し分かりやすくいうと、その線を取ってしまうとデザインが成り立たないというところまで無駄を削ぎ落とすということです。
ジュエリーに限らず過度にならない「大き過ぎない、小さ過ぎない」とにかく「過ぎない」ということも大切なことだと思います。

ファッションを語る上で、ココ・シャネルの名言に「ファッションとは、上級者になるほど引き算である」とあります。「余計なものは身に着けない」「いろんな色を取り入れ過ぎない」などです。

ファッションで個性を演出しようなどとは思ってはいけません。
お洒落はその人自身が持っている考え方や振る舞いなどが充分な個性であり、ファッションの定義とは「人に不快感を与えないもの」「相手に敬意を払うもの」であると考えます。
いくら高級なダウンコートでも真夏に着ていたら「暑そう」と思うでしょうし、臭ければ相手を嫌な気持ちにさせます。
相手に何も感じさせない、又は良い気分にさせるということがファッションの基本だと思います。
英国では「アンダーステイトメント」という言葉があり、ジェントルマンの装いに必要なことは「気づかれないこと(Unnoticed)」だといいます。「通りを歩いていて振り向かれたら、君の装いは失敗である」と語られたこともあるようです。

ジュエリーもそれそのものが派手なものではなく、ジュエリーとそれを身に纏う人が一体になっていることが大切だと思います。

「あの人、凄いジュエリー着けてる」と思われるよりも「あの人、凄く良い雰囲気」と思われる方が素敵だと思いませんか。勿論、物を褒められても嬉しいですが、その物を選んだセンスを褒められる方がもっと嬉しいように思います。

好きな言葉に「ひけらかさない美学」というのがあります。
分かる人には分かる、分からない人は気付かない。

そんなシンプルな感じが美しいのではないかと思う今日この頃です。

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