田名網敬一「記憶の冒険」
新国立美術館で開催されている田名網敬一「記憶の冒険」に行ってきました。8月初旬から開催されてましたが、列が凄いとのことでしたのでこれまで待ってて大正解でした。夕方に行くと人も疎で、想像を遥かに超えるアート作品のシャワーを浴びてきました。
田名網敬一氏は、私と同じ世代のグラフィックデザイナーでしたら、誰もが師と仰ぐ存在のお一人だったと思います。武蔵野美術大学造形学部デザイン科 (私の時代の視覚伝達デザイン学科?) を卒業後は、博報堂に入社され、退社後もグラフィックデザイナーとして、雑誌の装丁やイラストレーション、後に映像などなど、マルチなアーティストとして時代の最先端をいく仕事を次から次へとこなされました。
そして田名網氏と言えばコラージュのポップアート。1975年に創刊された日本版「プレイボーイ」誌の初代アートディレクターを勤められたのは余りにも有名で、創刊号から数冊、「ヤングミュージック」など貴重な雑誌が展示されてて心躍りました。
今年8月にご逝去されてたのですね。インスタレーションにご自身の蝋人形があったのですが、まるで魂が宿ってるかのようでした。享年88歳。幼少期に体験された戦争の記憶が創作活動の源になってると何かで読んだことがあります。ショートムービーの中で、終戦後に疎開先から東京に戻った時の鮮明な記憶「全てが焼き尽くされて空の青と焼け野原の赤の2色に分断された」という言葉が強く印象に残りました。
この展示計画から広報まで情熱を傾けてらしたそうですが、最後のパネルには、ご来場いただけなかったのが無念と記されてました。激動の時代を駆け抜けて来られた創造の軌跡。圧巻の展覧会でした。
「ご冥福をお祈りいたします」