画材店「月光荘」
銀座8丁目花椿通りにある画材店「月光荘」をご存知ですか?
大正時代、与謝野鉄幹、晶子夫妻との出会いから、多数の著名な文化人達と交流を深め、大正6年に、絵の具や海外の絵の道具を仕入れて配達する仕事を主にしたサロンから出発した「月光荘」。名づけ親も与謝野晶子氏。「暮らしに根ざした美意識を育む」を理念として運営され、店の建築設計は画家・藤田嗣治の監修によるもので、パリの街角をそのまま移したような当時としては斬新な作りだったので、 珍しい建築だからと様々な映画のロケーションとしても使われていたそうです。残念ながら新宿初店は空襲で焼け、再開するなら銀座で!と文化人達に勧められ戦後銀座で再出発をしたのだそうです。
開業当時は輸入絵の具を扱っていましたが、奇跡の「コバルトブルー」や、世界絵の具コンテストで1位を獲った「コバルト・バイオレット・ピンク」など、オリジナル絵の具を、苦労の末次々と開発し、自社の絵の具や画材のみを扱う画材店となっていきました。
私事ですが、娘達が通った幼稚園の園長先生の拘りで、指定絵の具セットがこの「月光荘」の物でした。無くなると銀座まで絵の具の補充でこの画材屋に訪れておりました。今思えば、幼稚園児ながら何とも贅沢で文化的な色の絵の具に出会ってたのだなあと感謝しております。娘は今でもオリジナルパレットセットを大切に持っております。
創業者の「月光荘おやじ」こと、橋本兵蔵氏は富山から18歳で上京後、郵便配達などを経て画材屋を開き、100年経った今も親族や社員、学生達が先代の想いを受け継ぎ守り続けていらっしゃいます。銀座はこんな素晴らしい老舗に出会える魅力があります。